物語は、昭和30年代。戦後10年を過ぎた頃、日本は失いかけた自信を取り戻すべく、人々はがむしゃらに働き、経済を立て直していた。しかし、世界からは 「 マネをする国 」 「 敗戦国 」 とレッテルが貼られていた。その頃、世界各国で地球観測の動きが活発になっていた。アメリカ、ソ連など戦勝国を中心に 「 国際地球観測年特別委員会 」 が設置され、未知の大陸 「 南極 」 観測が計画される。アジア諸国で唯一参加を表明した日本は、「 敗戦国の日本 」 に何ができるんだと世界から罵倒され、そして、日本に割り当てられた観測場所は、“インアクセサブル・接近不可能” な場所だった…。そこは氷点下50度、風速100メートルのブリザードが吹き荒れる最悪の場所、全く期待されていなかったのだ。「 今こそ日本人の底力を見せてやろうじゃないか。日本が外国に頼らず、自分の足で立って生きていく姿を世界に示すんだ 」それまで外国の背中を見つめてきた日本が、世界と肩を並べる時がきた。しかし、国や企業は資金援助には後ろ向きだった。それを後押ししたのは、日本の未来に大きな夢と希望を抱いた子供たちだった。「 僕のお小遣い使って!」 5円玉を握りしめた子供たちからの募金が全国各地から集まったのだ。あの頃のタイガーマスクは日本の未来を信じた子供たちだったのかもしれない。こうして日本の南極観測は 「 国際社会復帰の一大プロジェクト 」 になった。しかし、前人未踏の大陸は南極越冬隊に容赦なく牙をむいた。そんな越冬隊を支え心の拠り所になったのが、19頭の樺太犬だった……。この物語は、日本復活の扉を開くため、そして愛する人の想いを胸に南極大陸に命がけで挑んだ一人の若き学者と、彼と運命を共にした ”同士” 樺太犬の愛と絆のドラマである。